アドレスマッチング
2013年08月23日
1. アドレスマッチングとは
ある住所の位置を地図上に表示したい時、文字列である住所データのままでは地図上のどこにその住所が対応するかわかりません。そこで住所データを地図で使われている座標値(緯度経度など)に変換する必要があります。この技術を「アドレスマッチング」または「ジオコーディング」といいます。
アドレスマッチングを使うことではじめて、様々な地図に住所データを対応させて表示することができるようになり、高度な地理情報の分析が可能になります。
例:東京都板橋区舟渡3-15-22 →(緯度35.79425 経度139.68307)
現在、アドレスマッチングサービスとして無料のものも含め、さまざまなサービスが提供されています。ここではそのうちいくつかを使ってアドレスマッチングを行い、それぞれがどこまでの精度で位置を特定できるのか比較したものを紹介します。
2. アドレスマッチングの方法
アドレスマッチングサービスの基本的な動作は、住所データを都道府県、市町村といった行政区分の各レベルごとに分解し(図1参照)、住所と座標の位置参照情報を照合して座標値を出力します。このとき住所の末尾のレベルまで照合できなかった場合には、照合できているレベルまでの区域の代表点の座標値が出力されます。図2に処理のイメージ図を示します。
例:大字の舟渡まで照合でき、何丁目かわからないという場合には舟渡の代表点の座標値が出力される
比較用のアドレスマッチングサービスは無料のもの、有料のものを含めた以下のような特徴を持つA,B,Cの三つのサービスを使用します。
比較に使用するアドレスマッチングサービス
- Aサービス・・・無料
- 位置参照情報として街区レベル,大字・町丁目レベル位置参照情報(国土交通省・国土情報課)、電子国土基本図(地名情報)「住居表示住所」(国土地理院)
- Bサービス・・・無料
- 位置参照情報として街区レベル,大字・町丁目レベル位置参照情報(国土交通省・国土情報課)
- Cサービス・・・有料
- 号レベルまで参照可能な「住宅地図」を使用。
3. 入力住所データの取り扱い
入力される住所にはアドレスマッチングを行う上で都合の悪いものを含む場合があります。具体的には、
- 省略された住所
- 政令指定都市がある都道府県の表記が省かれているもの。
- 間違っている住所
- 表記が一意に定まっていない住所
- 「霞が関、霞ヶ関・自由が丘、自由ヶ丘」など表記にゆれがあるもの。
- 合併などに伴い、存在しない住所
などです。このような住所への対応として、似た住所の検索、住所の表記を置き換えて統一、古い住所の更新などの処理を行います。
4. 結果
変換結果の座標値をポイントデータに変換し、図3~5に示すように国土地理院発行の「基盤地図情報」と重ねて表示しました。検証に使った地図は「丁目番号」の街区符号、住居番号によって表された地域と「町丁目番地」の地番によって表された地域が混在しているものを使用しています。
マーカーの色はマッチングできた住所レベルを表し、
水色:大字まで ・ 緑:丁目まで ・ 黄色:番地まで ・ 赤:号まで
を表します。
水色や緑のマーカーは対象の区域の代表点であるので、いくつかのマーカーが重なって表示されています。
図 3 Aサービスによる結果
図 4 Bサービスによる結果
図 5 Cサービスによる結果
Cサービス以外では「丁目番号」の住居表示になっていない地域で「番地」レベルまでのマッチングを示す黄色の点が多くなっています。
どこまで地図上で特定できるかを比較するために、「号」レベルまでマッチングしている赤の点が集まった図3~5の赤枠部分を拡大します。わかりやすいように建物の外郭線をピンクで表示しました。
図 6 Aサービスによる結果の拡大図
図 7 Bサービスによる結果の拡大図
図 8 Cサービスによる結果の拡大図
「号」レベルの赤の点、特に青丸で囲まれた部分に着目します。図6のAサービスでは「街区レベル位置参照情報」に加えて、電子国土基本図(地名情報)「住居表示住所」の基礎番号(街区の境界を一定距離ごとに分けて番号をつけたもの)を参照しているため、街区の境界に沿った座標を出力しています。
図7のBサービスでは「番地」レベルの街区の代表点と同じところに街区内のすべての点が重なっています。これはBサービスが座標付与処理時に使っている位置参照情報が「街区レベル位置参照情報」(番地まで)のみであることから、「号」レベルまでのマッチングができないことに起因します。
図8のCサービスは赤い点がピンク色で示した建物の中にあり、実際の建物の位置に点があることがわかります。Cサービスでは「号」レベルまでの座標をもつ住宅地図を参照しているため、実際の建物にマッチングが可能となっています。
5. アドレスマッチングを行うにあたって
アドレスマッチングサービスによる出力結果はサービスが参照する位置参照データによって変化し、より詳細な座標の特定にはそれに応じた位置参照データを持つサービスが必要になります。そして地図に表示させる場合は、その縮尺によって求められる精度が変化し、表示させる地図の縮尺が小さい(図9参照)場合、詳細な座標は必要ありませんが、戸別表示が必要な場合などは「号」レベルの精度が必要になります。
これらを踏まえ、アドレスマッチングサービスを選択する際には、まず、使用目的や表示させる地図の縮尺に対してどの程度の精度が必要か見極めることが重要です。
図 9 Aサービスによる1/25,000での表示
本文中の地図は国土地理院の基盤地図情報(縮尺レベル 2500)を利用して作成しました。