地図の種類
2014年06月03日
地図の種類は大きく2種類に分けられます。現実世界をそのまま表現した地図と、目的に応じたテーマを表現した地図です。前者の地図は一般図と呼ばれ、後者の地図は主題図と呼ばれています。
一般図は現実世界の地形(海岸線、河川、湖沼、等高線等)や地物(道路、鉄道、橋、建物等)を一定の決まり(図式と呼ばれる)で表現することを主眼に置いています。その他、行政界や地名なども表現されています。国土地理院発行の地形図は代表的な一般図となります。その他、全国の市町村が都市計画図を作成する際ベースマップとして使用する目的で作成する、白図と呼ばれる都市計画基本図も一般図です。
主題図は一般図をベースマップとしてその上に目的に応じたテーマを重ねた地図で、目的に特化した地図になります。都市計画図、道路網図、ハザードマップ、河川図、下水道計画図などの他、人口増加量を地図上にグラフで表現したものも主題図になります。
一般図
国土地理院発行の一般図
国土地理院で発行されている一般図は地形図と呼ばれていますが、狭義の意味合いでは中縮尺の1/25,000、1/50,000、1/10,000で作成された地図が地形図と呼ばれます。大縮尺の1/2,500、1/5,000は国土基本図、小縮尺の1/20万は地勢図、1/50万は地方図、1/100万、1/500万は国際図と呼ばれています。
一般図は縮尺ごとに表現方法の規格と精度が厳密に決められています。この規格を図式といい、縮尺による見やすさ等を考慮して決められた、線幅、線種、地図記号、大きさ、注記の大きさ等の規格です。図式通りに作成することで、全国を統一的に整備することができます。図式は印刷技術の発展に伴い、これまで何度も改定されています。
一般図は印刷された紙地図のほか、デジタル化された数値地図がDVD版とオンライン版であります。また、平成24年から電子国土基本図を元にした電子地形図25000の発行が始まりました。電子地形図25000もDVD版とオンライン版があり、オンライン版は画像の大きさなどカスタマイズ出来るようになっています。以前の数値地図(地図画像)の解像度は256dpiでしたが、電子地形図25000は508dpiと300dpiから選べるようになりました。
名称 | 縮尺 | 面数 |
---|---|---|
地形図 | 1/10,000 | 311 |
1/25,000 | 4371 | |
1/50,000 | 1295 | |
地勢図 | 1/200,000 | 130 |
地方図 | 1/500,000 | 16 |
国際図 | 1/100万 | 3 |
1/500万 | 1 |
ちなみに、国土地理院発行の紙地図には地図記号の三角点の透かしが入っています。
市町村の白図
全国の市町村では都市計画図の背景として使用するため、白図を作成しています。縮尺は各市町村により異なりますが、1/2500、1/5000、1/10000が作成されています。呼び方も各市町村により、地形図、都市計画基本図、白図等と呼ばれています。これも、国土交通省が決定した図式(国土交通省公共測量作業規程)があり、全国統一の規格で整備されています。測量成果はDM(Digital Mapping)データファイルとして整備され、電子納品の標準データ形式になっています。
主題図
国土地理院発行の主題図
国土地理院では主に防災に関する主題図を発行しています。
土地利用図
戦後、GHQの命令により調査が開始され、食糧増産、資源確保などを目的に農林業の土地区分を調査し、地図を作成しました。その後、国土開発の発展により、農業的土地利用から都市的土地利用の区分に変更されました。
土地条件図
1947年(昭和22年)のカスリーン台風により利根川の堤防が決壊し甚大な被害がでました。この洪水被害により大規模河川の改修の必要性が高まり、その基礎調査として水害地形分類図(1956年(昭和31年)~)が作成されました。
1959年(昭和34年)9月、伊勢湾台風による大災害が起き、紀伊半島から東海地方を中心に甚大な被害がでました。水害地形分類図が濃尾平野でも作成されていました。災害後の調査で、水害地形分類図での被害予想区域と実際の被害区域を比較したところ、密接な対応関係が明らかになり、水害地形分類図の有効性が改めて証明されました。これにより、全国の平野部を中心に水害地形分類図を拡張した土地条件図(1963年~)の作成が開始されました。
土地条件図には災害予測に使用される地形分類(山地、台地、低地、人口地形、崩壊地等)を表現していて、防災政策の基礎的資料となっています。
火山土地条件図
火山土地条件図は各火山により表現方法は多少異なりますが、火山活動による地形分類(火口、噴出物の分布、地すべり地等)、各種機関及び施設(防災機関、救護保安施設、河川工作物等)などが記載されています。火山土地条件図を使用し、防災計画や土地保全・土地利用計画、火山調査・研究などに利用されています。
種類 | 縮尺 | 面数 |
---|---|---|
土地利用図 | 1/25,000 | 1287 |
1/50,000 | 43 | |
1/200,000 | 124 | |
土地条件図 | 1/25,000 | 95 |
火山土地条件図 | 1/10,000 | 1 |
1/15,000 | 3 | |
1/25,000 | 6 | |
1/30,000 | 4 | |
1/50,000 | 2 |
その他、沿岸海域土地条件図、都市圏活断層図、治水地形分類図、地盤高図、湖沼図等があります。
国土交通省国土政策局
国土交通省国土政策局では国土計画に必要な情報を整備、数値化しています。全国総合開発計画等の策定の基礎となるデータで、地形、土地利用、公共施設、道路、鉄道等国土に関する地理的情報の他、産業統計データなども整備しています。これらの国土数値情報は国土交通省のホームページよりダウンロードすることが出来るようになっています。
産業技術総合研究所の地質調査総合センター
地質調査総合センター(旧地質調査所)では全国の地質図、活構造図、鉱物資源図、重力図などを整備しています。
その他
都道府県、市町村発注の地図印刷業務のほとんどは主題図です。都市計画図、道路網図、上下水道計画図、地震・洪水・内水・津波ハザードマップ、観光ガイドマップ、ウォーキングマップ、自然公園区域図など。
統計データを地図上にグラフで表現してるような地図も主題図になります。