おしらせ

測地系(日本測地系と世界測地系)

2014年06月03日

測地系とは、ある地点が地球のどの地点かを座標(経緯度)で表す際の基準のことです。地球が完全な球体であれば世界のどこでも同じ基準でよいのですが、実際は南北方向に潰れた(赤道が膨らんだ)球体です。地球を地軸で輪切りにすると南北方向に潰れた楕円になります。この楕円が地軸で回転して出来る回転体を回転楕円体と呼び、この回転楕円体をモデルとして測地系を決定しています。

kaitendaentai

回転楕円体

この回転楕円体でも実際の地球とぴったりと合うわけではなく、ところどころいびつな形をしています。昔は地球を正確に測る技術がなかったため、各国が自国に一番合う回転楕円体モデルを独自に決定し、世界中でバラバラの測地系となっていました。

日本でも独自の測地系を使用していました。回転楕円体をベッセル楕円体、測地座標系は天文観測により経緯度原点座標値と原方位角を決定していて、日本周辺での使用を前提とした局地的測地系でした。

近年のVLBIや人工衛星などを用いた測量技術の進歩により、地球の形状が正確に計測出来るようになりました。VLBI(Very Long Baseline Interferometry:超長基線電波干渉法)とは、はるか数十億光年の彼方にある電波星(準星)から放射される電波を複数のアンテナで同時に受信し、その到達時刻の差を精密に計測し、その差からアンテナ間の距離を精密に測る技術です。3つ以上の天体に対して観測を行えば、アンテナの3次元的位置が分かります。世界の多くのアンテナが参加することにより地球全域の形状が計測出来るようになります。

VLBI概念図

VLBIの概念図

VLBIアンテナ

国土地理院のVLBIアンテナ
なりたま通信所より引用

このような地球形状の計測から、GRS80(Geodetic Reference System 1980)という回転楕円体が導き出され、第17回国際測地学・地球物理学連合(IUGG、1979年)においてGRS80回転楕円体が採択され、現在最も多くの国で採用されています。GRS80回転楕円体の中心は地球の重心になっていますが、ベッセル楕円体は重心と一致していませんでした。

日本で作成された海図の国際利用や、GPS(Global Positioning System)などを使用した測量結果を日本の地形図等に重ね合わせるには、それぞれの測地系に合わせる必要があり、国際化の障害となってきました。そのような背景から、2002年(平成14年)4月1日、測量法及び水路業務法の一部を改正する法律が施行され、新しい測地系が採用されました。以前の測地系を日本測地系と呼び、新しい測地系を世界測地系と呼ぶこととしました。

この世界測地系は、GRS80回転楕円体にITRF94(International Terrestrial Reference Frame 1994)座標系を合わせた測地系になっています。専門的には日本測地系2000、JGD2000 (Japan Geodetic Datum 2000)となっていますが、日本国内において使用するだけであれば単に「世界測地系」で差し支えないと思われます。世界測地系と日本測地系の座標は東京付近で、経度約-12秒、緯度約+12秒の違いが生じます。距離に換算すると北西方向に約450mずれることになります。(下図において、オレンジ線が日本測地系、緑線が世界測地系になっています)

mesh

測地系のずれ
※行政界は国土地理院の基盤地図情報を使用

世界各国がGRS80回転楕円体を使用し統一を図ろうとする流れの中、アメリカ合衆国だけはGPSで使用しているWGS84を未だに採用しています。GPSのWGS84とITRF系座標系の誤差はWGS84がこれまで数回の改定をしたことにより、ITRF系に接近し、現在ではほどんど同一のものとして扱えます。

現在、国土地理院で新たに作成されている地図はすべて世界測地系で作成されています。しかし、一部の市町村の都市計画基本図や主題図等はコストの関係で変更されていないものもあり注意が必要です。